
承豊は藤三郎にそう語った。まずは座学の書をすべて覚えよと。
どうやら戦国時代に平凡な農民として転生してしまったみたいなのだが、人を嬉々として殺し回るウォーモンガーでもなければ、その技量もない。現代日本人の記憶を引き継いでしまったからには、足軽徴兵を逃れる選択肢は寺社仏閣にこもるくらいしかない。どことも知らない寺にやられることに成功し、彼はそこで小坊主の豊念として修行することとなった。
それから幾歳月か、豊念は十英承豊と名を与えられ、そして22歳になった年のこと。共に学び飛車丸と呼び捨てていた友人の家が大変らしいと聞くことになった。父親が戦で討ち取られ、重臣もほとんど戻ってこなかったらしく、御家存亡の危機らしい。さすが戦国時代である。
「やりたいことを言えよ。今ある仕事も終わったし、手伝ってやるからさ」
そう言ってから承豊は友人の正式な名前を聞くことになる。幼名は龍王丸、今は今川氏真と名乗っているらしい……。
そっかー。桶狭間の戦いが終わったかあ。師匠は黒衣の宰相、太原雪斎だったらしい。
武将と僧侶の友情の物語であり、子を持たなかった男たちが弟子を育てる記録であり、寺に引きこもっていたカースト底辺の坊主のはずが周囲からは「雪斎の愛弟子」と認められ、やがて「笑ったまま相手を斬り捨てる御仁」「王将や金将ではなく指し手」と怖れられていく物語。
石鹸や猫車の発明とか殖産チートに頼ることなく、ユーモアを交えながらも戦国時代の過酷な外交と内政を語る歴史ファンタジー。イラストの承豊とか信長とか、凄く極悪そうに描かれていて最高です。
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