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Channel: 付け焼き刃の覚え書き
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「異世界誕生2006」 伊藤ヒロ

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「まずジャンルが悪い。今どきファンタジー小説なんてあり得ないだろ」

 2006年あたりはインターネットが普及し、個人サイトでアマチュア小説を投稿する者がぼつぼつ出始めていたし、ケータイ小説が人気になっていた。けれど、ファンタジーそのものは下火で、もう終わったジャンル扱いされていて、現代日本人が異世界で活躍なんて昔のマンガやアニメで手垢のついた時代遅れだ。
 そんな時代に、トラック事故で我が子を失った母親が、息子の遺したプロットを元に異世界転生もののライトノベルを書き出していた。息子は本当に異世界で生きていると信じて……。

 ヒキニートの息子が遺した稚拙なプロットをもとに、おぼつかない手つきでキーボードを打つ母親。夜中に母親にたたき起こされ、書きかけの作品を読まされる娘。帰宅しない父親。崩壊する家庭の狂気の中から、産声を上げる異世界。そして、ネットでさらされ、炎上していくさまが描かれる問題作。
 まだ干支が一回りしたくらいではあるけれど、ネット環境とかライトノベルやファンタジーを巡る状況は激変したなあということを思い起こさせる1冊でしたし、母親の壊れていくさまが怖いです。光が最後に垣間見えるのが救いでした。

【異世界誕生2006】【伊藤ヒロ】【やすも】【講談社ラノベ文庫】【ジャガイモ警察】【火薬】【熱膨張】

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