
電卓バレーの暗黒街のボス、工匠の言葉。
第二次大戦はいち早く核兵器と巨大ロボット兵器を投入した日独の枢軸側勝利で終わった。そして40年。アメリカ西海岸は日本の統治下にあって日本合衆国(USJ)と呼ばれている。
情報統制を担当する帝国陸軍検閲局勤務の石村紅功(いしむら・べにこ)大尉のもとに、特別高等警察の槻野昭子が訪れる。石村のかつての上官であり、軍事ゲーム開発の第一人者の六浦賀将軍が消息を絶っているというのだ……。
表紙イラストからすると巨大ロボットSFっぽく見えるけれど、実際には出番はさほど多くなく、反日のアメリカ勢力テロリストをめぐる特高と憲兵隊の、人の命も尊厳も風船より軽い捜査に(暗い過去のある)ノンポリ技官が巻き込まれる、サイバーパンク小説。21世紀版『高い城の男』と言われるけれど、確かにロボットアクションSFとかではなく、そちらの要素が強い話です。
いわゆる大日本帝国の悪いところを濃縮した上に、薔薇の香りの香水を振りまいて取り繕ったようなディストピア感は、知っていてわざとやっているのか、勘違いの上塗りしているのか気になるところです。朝食に、味噌汁とベーコンにカッパ巻という組み合わせは何なんでしょうね。ご飯に焼き海苔とキュウリの漬け物というのは普通だけれど、カッパ巻かい! 太平洋戦争で日本が勝っていたら、こういう食文化になっちゃうのかねえ? ちょこちょこ日本文化が根付いているのをみせるために食事シーンとかあるのだけれど、ぜんぜん美味そうじゃないんだ。
日本語訳は上手く雰囲気を活かしていて、パソコンだかなんだかを「電卓」と訳したのはすごいと思いました。
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