
コネティカット生まれのヤンキーで元技師だと名乗るその男は、自分はアーサー王の宮廷にいたことがあると語り始めた。
工場の部下にぶん殴られ、気がついたときにはキャメロット近くの樫の木の下に転がっていて、通りすがりの騎士に捕まったというのだ……。
異世界転生のひな形というか、過去の世界に転移して現代知識でチートぶりを発揮する冒険譚の原型。
「ああした奇々怪々な古い伝説を読んでいると、つい胸の中で、当時のような時代と現代とを比較せずにはおれなかった。そして19世紀をいきなり6世紀へおとしこんで、その成り行きをみることができたら、とんだおもしろいことになるかもしれないという妙な想像をした」
「王子と乞食」で立場の入れ替えによる視点の転置を描いたマーク・トウェインは、そんな発想から今度は現代アメリカの技術や思想を貴族や僧侶が我が物顔に振る舞う中世社会に放り込みました。そして典型的なヤンキーを「ボス卿」として宮廷で思う存分暴れ回らせたのでした。
現代日本の女子高生が織田信長のもとで産業チートぶりを発揮したように、アーサー王のもとでヤンキー技師が産業チートぶりを発揮するわけですが、ただ、昨今の異世界転生ものと違うのは、中世に現代知識を導入する過程をほとんど描いていないという点。アーサー王の庇護と現代知識があれば、火薬だろうと発電設備だろうと簡単にできるぜ!という展開が、まだ許された時代なのでした。
あと、サンディとボス卿の関係は、もちっとしっかり描いても良かったと思うのね。最後の最後でそんなに思ってたのかよと。
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