
邪魔する者は正面から蹂躙するだけだと、槍の勇者こと北村元康。
そして実際、国境の砦など一撃粉砕してしまう。
最終決戦を前に、槍の勇者は別の世界へとはじき飛ばされた。気がつけば、そこは始まりの召喚の間。もう一度、この世界の物語を最初からやり直すことになったのだ。
しかし、LVもスキルも過去に飛ばされる前のまま。手にした槍には能力「時間遡行」、その効果は「分岐する世界」。そして元康自身もかつての軟派で思い込みの激しい若者ではない。さまざまな艱難辛苦を乗り越える中で人格が崩壊し、もはや人間の女性は豚にしか見えず、その声は「ぶーぶー」としか聞こえない。愛するものは鳥の魔物フィロリアルだけであり、その中でも最愛のフィロリアルであるフィーロの育ての親、盾の勇者である岩谷尚文を「お義父さん」と敬愛し、何物にも代えて守りたい愛の狩人となっていた。
盾の勇者を貶め、陥れ、殺そうとする国王や王女などさっさとこの世界から消し去ってしまいましょうぞ……。
『Re:ゼロから始める異世界生活』と同じく、主人公が何度も失敗して同じ時間線をループして繰り返しながら、よりよい結果を求めて試行錯誤していくファンタジー。
リゼロに限らず、ループしてやり直す時間SFやファンタジーは他にもいくらでもあるのだけれど、この話の主人公となった元康はこの時点で世界最強ともいえるチート能力者であり、なおかつ人格が壊れてしまっていることが特異です。澄んだ目をした無敵の男が人の話をろくに聞かず、いきなり国王や他の勇者を殺して回り、国の兵士を片っ端から吹き飛ばしていくという魔王の所行なんだけれど、その目的はあくまで盾の勇者を守り育てること。結果的に世界はオーライだけれど、すべてをショートカットしようとするので死屍累々。
オリジナルである『盾の勇者の成り上がり』より、むしろ読みやすくて面白いんですよね。本編では裏切られ続けて人間不信になって荒んだ主人公・尚文が、この話ではまだ素直で人付き合いの良い青年で、それが強靱……じゃなくて凶刃……ではなくて、とにかくATOKでも変換できない類いの元康に翻弄されるスラップスティック・ファンタジーなので、気軽に読めちゃうんです。
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